北部火山帯

Iceland
Volcanic System
アイスランドの火山
Wikipedia より

アイスランドの火山帯は、図のように南北にのびていて、北部には火山性の地形が転々としている。旅では、リングロードを東海岸から西海岸へ向かって、この北部火山帯を横切った。その途中で立ち寄った場所、あるいは、バスの車窓から見た風景を掲載する。火山地帯といっても、山あり、湖あり、バラエティに富んでいた。

アイスランドの島の成り立ち、火山や気候などの特徴については、別ページ「アイスランドの地形をつくる三つの要因」に整理している。


東海岸から進んでくると、リングロードは山間部を抜けて北部へ向かう。この辺りでは、お花畑のような穏やかな光景が見られたかと思えば、その先では一転して黒い荒野が広がっていた。

デティフォス(Dettifoss)に立ち寄ったあと、リングロードを西進すると左前方に赤茶けた山と立ち上る白い蒸気が見えて来る。いかにも地熱地帯という光景だった


ナゥマフィヤットル地熱地帯(Námafjall Hverir)

リングロードからすぐ近くに駐車場があり、展望デッキが設置されている。ここから、ナゥマフィヤットル山(Námafjall)とその麓に広がるクヴェーリル(Hverir)という地熱地帯が一望できる。箱根大涌谷を小さくしたような感じである。大涌谷も約3000年前の火山活動でできた地熱地帯だが、こちらは噴気も泥の沸き方も比較的おとなしく見える。規模の違いなのか、地熱活動の違いなのかはわからないが、類似した光景なのは確か。

すぐ前には、灰色の泥がボコボコと泡立つ泥池がある。地熱活動によるものだ。展望デッキに解説板が掲示されている。ボコボコで、別府の地獄や、イエローストーンのマッドボルケーノを思い出すが、ここのはおとなしいようだ。

ロープとちょっとした舗装でトレイルが設置されていたので、少し南の方へ行ってみたが、山の上にまで行かないと違った光景は見られないようなので、すぐに引き返した。

日本人の我々にとってはかなり見慣れた光景であるが、火山が少ない国や地域から来た人たちには驚きの地獄のような光景に見えるのかもしれないなどと思う。


クラプラ(Krafla)のヴィーティ火口湖(Víti/Stóra-Víti)

クラプラ(Krafla)は、カルデラと南北に延びる割れ目帯をもつ火山システムで、その周辺には地熱発電所やハイキングコースなどもある。リングロードから北側へ10km弱、標高差200mくらいの山道を登った先に、クラプラのヴィーティ火口湖がある。ヴィーティ(Víti)とはアイスランド語で「地獄」という意味らしい。「火口」と思っていたが、調べて見ると違う。別府の地獄や地獄谷とか、こういう荒々しい地熱の光景を「地獄」と呼びたくなる感覚は、日本と共通なのかもしれない。

ここは1724年に起きた大きな爆発で形成された、直径約300mの爆裂火口。その後は泥が100年以上も沸騰していたという。現在は水を湛えた火口湖になっている。Víti=「地獄」という名前にも納得である。

しかし、水の色はターコイズブルーというか緑青色というか、地獄のイメージとはかけ離れている。

ミーヴァトン湖(Mývatn)

ミーヴァトン湖は、ここまで見てきた光景と雰囲気が違う感じがした。しかし、この湖は、約3,800年前に流れ出した大量の溶岩が川をせき止めてできたもの。この時の溶岩は更に北西に進み、北の海まで達したらしい。さらに約2,300年前には、次に紹介するクヴェルフィヤットル(Hverfjall / Hverfell)の南に延びる約12kmの割れ目から大量の溶岩が流れ出し、湖の一部を覆った。その溶岩はさらに谷を下り、海まで達したという。

また、この湖は平均水深が2.5mほどと非常に浅い。また、流れ込む大きな川はなく、主に湧水によって満たされているそうだ。

なお、MývatnとはMýのvatn、つまり「ユスリカの湖」という意味らしい。ユスリカは蚊によく似たハエの仲間だが、人を刺すことはなく、蚊柱のような大群をつくることがある。

それにしても、火山地帯とは思えない静かな光景だった。


クヴェルフィヤットル(Hverfjall / Hverfell)

リングロードから黒い山が見える。頂上は凹んでいるようで、山というかクレーターと呼ぶ方がふさわしいような形状だ。

駐車場から歩き斜めにつけられた斜面を150mほど登る。距離的には600mほどある。頂上に着き、見渡すと内側は、まさに、すり鉢というか、上に向けたスピーカーコーンというか、なかなかインパクトのある景色だ。西側を見るとミーヴァトン湖を見渡せる。北側には、立ち上る水蒸気が幾筋か見える。地熱発電所らしき施設も見えている。

降りてくると、クレーターの斜面のすぐそばに池があり、水面が鏡になっていた。面白いアングルだと思う。

ところで、このクレーターは約2,500年前のマグマ水蒸気噴火によってできたものだという。地下から上昇してきたマグマが、この一帯の豊富な地下水と接触して激しい爆発を起こし、細かく砕かれた火山灰や砂礫が火口の周囲に降り積もって、このような綺麗な形になったとのこと。その約200年後、今度はこの山の南側に延びる割れ目から大量の溶岩が流れ出し、古いミーヴァトン湖の一部を埋めて現在の湖の形をつくったらしい。先ほどの湖の説明につながる。

ちなみに、1960年代にはアポロ計画の宇宙飛行士たちがアイスランドを訪れ、月面での岩石のサンプリングなどに備えた地質訓練を行っている。持ち帰られた「月の石」を思いだす。ニールアームストロング船長もミーヴァトン近くなどを訪れたそうだ。この地球離れした景色を見ていると、訓練場所に選ばれたのもわかる気がする。

いろいろなところで、ここクヴェルフィヤットルで訓練が行われたという情報を見かける。また、そのように思わせる誘導的な画像が使われていることもある。しかし、調べた限りでは、クヴェルフィヤットルそのもので訓練が行われたという確かな記録は確認できなかった。現地の岩の状況からしても、観光地であることからしても、ここで訓練したという情報は正しくないと思う。


次の最初の写真は、クヴェルフィヤットルへの脇道が848号線に合流する交差点で撮ったもので、クヴェルフィヤットルの西側からの姿が見える。周囲には溶岩原が広がり、ディムボルギル(Dimmuborgir)への案内板も写っている。ディムボルギルは、溶岩柱などの奇岩がゴロゴロしている場所で、遊歩道が設けられているそうだが立ち寄らなかった。正面奥の山は、Lúdent(ルーデント)で、クヴェルフィヤットルなどより古い時代に、クヴェルフィヤットルと同じようにマグマ水蒸気噴火でできたクレーターだそうだ。

少し進んだところでは、左側に、右側にあるミーヴァトン湖とは繋がっていないように見える池があった。調べてみると、湧水によって水が蓄えられ、ミーヴァトン湖へオーバーフローしているらしい。また、溶岩柱のような岩塊も見られた。すべて、火山活動と溶岩によって作られた景色なのである。


その後、ゴーザフォスに立ち寄った。このページは北部火山帯のページではあるが同じ日に訪れたこの滝の写真も掲載しておく。

ゴーザフォスの滝(Goðafoss)

リングロード脇の駐車場から少し歩くとすぐに滝が見えてくる。遊歩道があり、滝のすぐ上の辺りまで行ける。しかし、時間の関係から、そこまでは行かず手前の方で撮影するだけだった。

Google Maps でみると、現在の駐車場を含む設備が一新されたようだ。ほとんど、何もなく場末的なところだったという記憶なのだが。

スキャゥルファンダフリョゥト川(Skjálfandafljót)にある。この川は中央高地から流れてくる長い川で、平坦な大地を北へ流れ、ここで突然段差を落ちる。高さは場所によって9~17m、幅は30mほどらしい。なかなか壮観ではあるが、デティフォスを見た後なので比較的小さく感じた。

駐車場にはゴーザフォスの名前の由来が説明してあるのだが、これが完全な史実ではないらしいところが面白い。西暦1000年頃、アルシング(シンクヴェトリルで行われる全島会議)で公式宗教をキリスト教とすることが決められた。そのとき、この近郊に住んでいた法律家で、アルシングにも参加していた人物が、それまで信仰していた神々の像をこの滝に投げ入れたことから、それ以来、Goða≓God、「神の滝」=Goðafossと呼ばれるようになったという物語である。ところが、この「神像を滝へ投げ入れた」という話は当時の記録にはなく、文献に現れるのはずっと後の19世紀になってからだそうだ。つまり「1000年前に実際に起きた出来事」というより、後世に生まれた伝説らしい。そう知ると、駐車場の説明板もまた面白く見えてくる。


リングロードを巡る旅は、北西部へ向かう。