アイスランドの地形をつくる三つの要因
Iceland
アイスランドは、いたるところに絶景があると言われ、実際にアイスランドを旅してみてまさにそうだった。
では、どうしてアイスランドは絶景が多いのだろう。調べてみると、アイスランドの地形形成に影響を及ぼしたというか、原因となった三つの要因があることがすぐにわかる。
- 北アメリカプレートとユーラシアプレートの境界上にあること
- マントルプルーム(ホットスポット)の上にあること
- 北極圏に近い寒冷な気候であること
こういったことを、準備段階でしっかり勉強しておいたら「あれは撮ってなかった」というようなことは少なくなっていただろうと思う。反面、興味を持った場所を自由なアングルで撮影してきてよかったと思っている。贅沢言えば、勉強した今、もう一度訪れればいいことかもしれない。
北アメリカプレートとユーラシアプレートの境界上にあること
アイスランドは、「北アメリカプレート」と「ユーラシアプレート」の境界である大西洋中央海嶺の上に位置している。そして、二つのプレートは年間数センチメートルの割合で広がっている。
境界上の場所として知られるシンクヴェトリルでは、アルマンナギャウ(Almannagjá)やフラフナギャウ(Hrafnagjá)をはじめ、多くの断層や裂け目が並び、広い地溝帯を形成している。プレート境界というと地図上の一本の線を想像してしまうが、実際にはある幅をもった変形帯であり、その中に複数の裂け目が存在している。
シンクヴェトリルのアルマンナギャウ
地溝帯にある一つのギャウ
マントルプルームの上にあること
二つのプレートが離れていく大西洋中央海嶺では、地下からマントルが上昇し、圧力が下がることでマグマが生じ、火山活動によって新しい海洋地殻がつくられている。アイスランドが特異なのは、その大西洋中央海嶺とマントルプルームが重なっていることだ。大量のマグマが供給されることで地殻が厚く形成され、大西洋中央海嶺の中でもアイスランドは海面上に大きな島として現れている。また、日本のようにプレート同士がぶつかり合う場所で起きる火山活動とは、その成り立ちが大きく異なる。
アイスランドの火山
Wikipedia より
図示されているように、アイスランドの火山が、主にプレート境界帯(地溝帯)の周辺に集中して存在しているのも興味深い特徴である。東部火山帯には、2010年に大噴火してヨーロッパ中の航空網を麻痺させたエイヤフィヤトラヨークトル(Eyjafjallajökull)をはじめ、ヘクラ火山(Hekla)、カトラ火山(Katla)、ラキ火山(Laki)などが有名だ。一方、南西部のレイキャネス半島(Reykjanes)では、近年、火山活動が非常に活発化している。特にブルーラグーンからほど近いスンドヌークル火口列(Sundhnúksgígar)周辺では、地割れ噴火が断続的に繰り返されており、2025年7月にも再び噴火したことは記憶に新しい。
グンヌフヴェル地熱地帯
火山帯があることで、火山の噴火や温泉があるというにとどまらない。溶岩や、噴火で放出された火山灰、軽石などのテフラ(tephra)が、さまざまな地形をつくっている。黒い砂原、溶岩原、黒い砂浜、玄武岩の柱状節理など、例を挙げればきりがない。
関連することだが、アイスランドには地熱を利用した発電所が幾つもある。地下の高温の岩体によって温められた地下水は、蒸気や熱水となって地熱貯留層にたまる。その層を探り当て、井戸を掘って蒸気や熱水を取り出す。これらのエネルギーを利用してタービンを回し、発電する仕組みである。地熱発電は、化石燃料を燃やす発電に比べて温室効果ガスの排出量が少ないことも、メリットとされている。アイスランド国内の発電量の30%程度をまかなっているほどだそうだ。
アイスランド政府や統計局の公式ウェブサイトによる。年によって前後しているが概ね30%程度になっている。興味深いことは、他の70%は水力発電で、ほぼ100%を再生可能エネルギーでまかなっている。課題は、陸上、海上を問わず輸送にかかるエネルギーを石油由来から再生可能エネルギーに変えるために必要な電力を生むことだそうで、そのための開発計画もあるらしい。
また地熱は、発電のみならず、暖房にも広く利用されている。住宅暖房に使われるエネルギーの約90%が地熱由来だという。何ヶ所かで利用済みの廃熱施設を見たが、これも何度でもとことん利用している感じである。一つの施設を挙げるなら、ブルーラグーンの温泉施設である。
国内でも、大分県の八丁原発電所などがあり、見学をさせてもらったこともあるが、思ったよりずっと小規模だった。聞くと、開発コストがかかることはさておき、開発候補地の多くが国立公園内にあり、開発に制約があること、温泉旅館などへの影響のリスクがあること、施設を作る平地が少ないことなどが理由だそうである。もったいない気がするものだ。
北極圏に近い寒冷な気候であること
三つ目の要因は寒冷であることだ。
アイスランドは、北大西洋海流の影響で高緯度地域としては比較的暖かい地域であるとはいえ、寒い。降った雪が融けずに堆積し、ヴァトナヨークトル氷河をはじめとする巨大な氷河が保持されている。現在は氷河時代の中の間氷期にあたるが、過去の氷期にはほとんど島ごと氷河に覆われていたという地域である。
ヴァトナヨークトルの支流、スヴィナフェルスヨークトル氷河
氷河の下で火山が噴火し、融けた大量の水がヨークルフロイプ(jökulhlaup)と呼ばれる大洪水を起こす。氷河が地面を削ってU字谷をつくる。火山と氷河が重なるアイスランドでは、こうした作用も地形形成に大きな影響を与えている。
三大要因について、ざっと説明したが、そう単純ではない。もっと複雑に他の要因も重なってアイスランドの地形になっているのだろう。先ほど少し触れた北大西洋海流、海に囲まれた島であること、降水量や標高、さらには川の流れによる侵食や堆積などが思い浮かぶ。
ある風景に出会ったとき、「なぜ、こんな地形が成立したのか?」という問いは、常に、浮かび上がるが、アイスランドの場合、ここに書いた三要素を頭に置いておけば、その地形がどうしてできたのかを考える手がかりにはなると思っている。
「プレートがぶつかる場所」とか「プレートがぶつかって地下が熱せられ溶岩が吹き出ている」などという、結構いい加減な解説がネット上で見られるが、要注意である。