レイキャネス半島

Iceland

レイキャネス半島(Reykjanes)は、アイスランド南西部に突き出た半島である。首都レイキャヴィク(Reykavik)はその付け根にあると言える。また、ケプラヴィーク国際空港があるケプラヴィーク(Keflavík)は、この半島に位置している。

Volcanic System
アイスランドの火山
Wikipedia より

また、レイキャネス半島一帯は火山活動の活発な地域である。「アイスランドの地形をつくる三つの要因」の説明にも書いたが、近年はブルーラグーンからほど近いスンドヌークル火口列(Sundhnúksgígar)周辺で、地割れ噴火が断続的に繰り返されている。2025年7月にも再び噴火し、大量の溶岩が流出した。

噴火した地域などは、visitreykjanes.isのサイトに紹介されている。また、必要に応じてアップデートされている。

ここは、そんな地域なのである。

2016年の4月と8月の2回訪れたが、両方の旅で撮った写真をいくつかのエリアごとに整理して、東側から掲載している。


セルフォス(Selfoss)

セルフォス(Selfoss)はサウスコーストの西端の町で、リングロードから分岐した34号線などを通り、レイキャネス半島へ向かう起点でもある。南部では一番大きな町であるが、それでも2016年当時の人口は7,000人弱だったらしい。アイスランドで人が住んでいるのはレイキャヴィクだけであるということを改めて思い起こさせられる。

町の中心のリングロードが右屈するラウンドアバウトに接し、アイスランドでも最大級の流量を誇るオルフサゥ川(Ölfusá)にかかる橋を見下したアングルである。

Gunnuhver
ホテル窓からの夜景というか、朝方の風景


まずは南下して海岸へ出て、34号線を西へ向かう。オルフサゥ川河口付近では、西から細長い砂州が延び、川の出口を狭めている。その狭い水路に架かる橋を渡ると、右側(陸側)にはしばらく水面が続く。河口部に形成された潟湖のような地形である。34号線が38号線にぶつかると左折して南下し、その後427号線に入って大西洋が見えてくるとレイキャネス半島に入ったという感じがする。

苔や低木が生えているところもあるが、砂原や溶岩原が続く、荒野としか言いようのない風景の中を50kmほど進んだ。時折、大西洋からの波が白い波頭を作っているのが見えた。

3枚目の写真には、ぽつんと一軒の家屋が見えている。かつてこの一帯は漁業の拠点で、多くの漁師小屋が建っていたところらしい。ただ、この建物がそれらと関係するものなのか、今も使われているのかはわからない。いずれにせよ、寂寥感が漂うアングルだと思った。

42号線にぶつかったところで、右折し、山間に入る。


グライナヴァトン湖(Grænavatn)

42号線右側に湖が見える。雨模様でも緑色の湖水が鮮やかだった。Grænavatn(グライナヴァトン)と言うらしいが「緑の湖」という意味らしくて、納得のネーミングである。およそ6,000年前の火山活動で、地下水とマグマが接触して起きた爆発によってできた火口に水がたまった火口湖だと考えられているそうだ。(地質学的時間としては)新しい湖だ。

湖越しに蒸気が立ち上っているところが見え、活性している火山地帯に入ってきたと実感できる。

3枚目の写真に、映り込んでいる結構大きな建物は、1950年代の大規模な酪農計画が頓挫し、牛舎とサイロが残っているのだそうだ。1950年代のことはわからない。しかし、2016年現在、雨で曇っているのでよけいに感じるのかもしれないのだが、この一帯は牧草が育つのかと思ってしまうような自然環境だった。


セルトゥン地熱地帯(Seltún)

グライナヴァトン湖から水蒸気が見えた辺りが、セルトゥン地熱地帯(Seltún)だった。42号線沿いに「Seltún」という文字と水蒸気が出ている写真がついた案内標識が出ていて、駐車場も整備されている。

駐車場には、トレイルマップとここの説明がされた案内があり、「セルトゥンの泥泉や噴気孔は絶えず変化している。たとえば1999年秋には、Drottningarhola(『女王の穴』)が爆発して大きな泥泉が形成された。噴気にはさまざまなガスが含まれ、その一つが温泉地特有の臭いとして知られる硫化水素。硫黄化合物の影響によって湧水は酸性になり、植物が育ちにくい。かつてはここで硫黄が採取され、アイスランド国外へ輸出され、火薬の製造に使われていた。」というようなことが書いてある。硫黄を採掘していたということは、この景観には人の手による造形も入っているということなのだろう。

トレイルは木製のボードウオークが整備されていて歩きやすい。

駐車場から見えていた最初のテラスからの景観。雨が降っているので、もともと湧水によってできた池なのか、雨がたまったものか判断がつかなかった。2枚目の写真のように、一部では確かに湧水(温水?)が見られた。3枚目は、奥のテラスから駐車場方向を見たアングル。硫黄と思われる黄色、シリカと思われる白などに染まっている部分もある。


クライファルヴァトン湖(Kleifarvatn)

セルトゥン地熱地帯を後に北上すると、かなり大きな湖がある。42号線に沿って南北5km以上ある。この湖は、クライファルヴァトン湖(Kleifarvatn)といい、南北に連なっている山々の2列の間の低地に水が溜まったものらしい。地図を見ると不思議なことに、湖から流れ出す川がない。わずかな流入はあるものの、水は主に多孔質の火山性地盤を通して地下へ抜けているらしい。

3枚目は、5分ほど走った北部で撮った写真だが、こちらは水が濁っている。降り続く雨が周囲の土砂を運び込んでいたのだろうか。


ブルーラグーン(Blue Lagoon)

アイスランドの観光案内などには、必ずといっていいほど登場するブルーラグーン。湯気の立ち上る青白い湖と大きな施設があり、人々が水着で温水浴を楽しんでいる、というイメージそのままの場所である。確かに多くの人々が訪れていて活気がある。しかしながら、入浴しなかった。なんか入ろうという気がしなかったのである。8月はツアーメンバーが入浴している間、周囲を散策していた。2枚目は、4月に撮影した写真だが、周囲の景観がわかる。溶岩によって作られた台地、そして苔。このアイスランドでは見慣れた景観の構成要素だ。そして、3枚目の写真は、4月に426号線から、発電所方向を撮った一枚。ブルーラグーンより強い印象が残っている。

ブルーラグーンは、温泉が自然に湧き出してできた広い湖――と思っていたら、ちょっと違う。隣接するスヴァルスエインギ地熱発電所(Orkuver í Svartsengi)では、地下深くから高温の地熱水を汲み上げて利用している。1970年代、その利用後の地熱水を溶岩原へ排出したところ、本来なら地下へ浸透するはずの水が溜まり始めた。地熱水に大量に含まれるシリカが溶岩の隙間を塞いだためで、それが現在のブルーラグーンの始まりだったそうだ。つまり、ここに自然の温泉湖があって、それを発電所からの温水が温めているのではない。そもそもラグーン自体が、地熱発電所から排出された地熱水によって生まれたのである。ただし、その水は地下約2,000mで海水と淡水が混ざり、地熱によって熱せられた天然の地熱水。白い泥状に見えるものも、その水に含まれるシリカが析出したものだ。天然なのか人工なのかといえば、なんとも微妙なところである。これも、なんか「温泉だ、入ってみよう」という気がしなかった理由の一つなのかもしれない。

先ほども書いたが、この辺りでは近年、噴火と溶岩流出が繰り返され、道路の閉鎖や防護堤の建設など、大きな影響が出ている。次に行ったら、周囲の景観さえ変わっているかもしれない。


グンヌフヴェル(Gunnuhver)

グンヌフヴェル(Gunnuhver)という地熱地帯は、半島西端からほど近い地獄である。

轟音とともに凄まじい勢いで蒸気を吹き上げている場所の近くまで木製のボードウォークが設置してある。蒸気は、直径20mほどの泥泉(Mud pool)から出ているらしいが、蒸気で見えない。

1番目の写真の背景に見えるのは、レイキャネス地熱発電所(Reykjanesvirkjun)。地下約2,700mの深さから、290℃〜320℃という高温の地熱流体を汲み上げて発電に利用しているそうだ。また、 発電後の蒸気を冷却するために、毎秒約4,000リットルもの海水冷却システムを導入しているらしい。海水を利用しての冷却というと、福島第一原子力発電所水素爆発のとき海水冷却ができなかったという話を思い出すが、ここでの冷却は方法が違うだろう。システムでの冷却のはず。関係ない話だけど...


ヴァラフヌーカモル(Valahnúkamöl)

半島の最西端の辺りに、ヴァラフヌーカモル(Valahnúkamöl)という海岸がある。海に面して、丸くなった大きな礫が高さ10mほどにも積み重なっている。大西洋の強い波によって岩が削られ、運ばれ、これだけの礫が積み上がったらしい。隣にあるヴァラフヌークル(Valahnúkur)の方を見ると、高い海食崖ができ、その沖には海食によって取り残された岩塔もある。同じ波が、一方では崖を削り、一方では削り取った岩を丸めて積み上げているのだろうか、などと思う。

最初の、ヴァラフヌーカモルを見上げた写真だが、左上にペンギンの頭のようなものが写っている。これは、19世紀に絶滅した オオウウミガラス(Pinguinus impennis)の銅像だ。北大西洋に生息していた大型の飛べない海鳥で、実は、実は、「ペンギン」という呼び名は、もともとこの鳥に使われていたそうだ。

知り合いの写真家がアルプスで撮った針峰上の登山者の写真を思い出して撮ってもらったが、足がすくんでいるようで格好わるい。そんなに高くない岩の上だがアングルをうまく使って相当高い尖峰に颯爽と立っているように見えるはずだったんだが...


大陸に架かる橋(Brú Milli Heimsálfa)

グンヌフヴェルの北7.5kmほどのところに、大陸に架かる橋(Brú Milli Heimsálfa / Bridge Between Continents)という小さな歩道橋がある。この写真は橋の上から南の方を見たアングル。「ICELAND 2016」が、たまたま映り込んだでいる。(実は文字に気付かず見切れている。)これは旅の一つの記念になった。

アイスランド形成の要素の一つであるプレート運動によって生じた裂け目が見られるところだ。調べてみると、この橋が架かるÁlfagjáも、北アメリカプレートとユーラシアプレートが離れていく広い境界帯の中にある裂け目の一つである。プレート境界というと地図上の一本の線を想像してしまうが、実際にはある幅をもった変形帯であり、その中に複数の裂け目が存在している。「大陸間をつなぐ橋」というのは、そんな地質をわかりやすく見せるための象徴的なストーリーということだろう。アイスランドらしいといえばアイスランドらしい。

調べていると、もう一つ関連した話があった。この橋には、レイフ・ザ・ラッキー橋(Leif the Lucky's Bridge)という名前もある。レイフとは、アニメ 「ヴィンランド・サガ」で主人公に新大陸ヴィンランドの存在を教える重要人物として描かれているレイフ・エリクソン(Leif Erikson)のこと。実在したと考えられている人物で、西暦1000年頃、コロンブスよりはるか以前に北米へ渡ったとされる、アイスランドゆかりのヴァイキングらしい。まさかここで「ヴィンランド・サガ」につながるとは。いろいろ面白いことだ。