十数年間、週末を過ごした森の隠れ家。富士山麓に山荘を建て、週末ごとに通う "Get Away Home" の暮らしを楽しんでいた。事情があって2015年に手放したが、ここではその山荘で過ごした日々を振り返ってみたい。
唯一、自ら企画・構想し、基本設計まで手掛け、施工者選定から完成までをマネジメントした建物。こんな機会はもうないだろうと思う。
設計者ではないのでCADソフトは持っていなかったため、代わりにExcelで構想図を作成した。立面や設備図、仕様書、見積要項書まで作成し、数社から設計施工の見積を依頼。メーカー系は対応ができず地元の工務店にお願いした。
長い時間を過ごした空間を少しだけ振り返ってみた。その後、何度か前を通ってみたが、現在の所有者の方がお使いになっている様子なので、あまり詳細に紹介しない方がよいだろうと思う。現在形ではなく、過去形である。
約30畳のリビングルーム。この空間を得るための建物といっても過言ではない。吹き抜けの南面には当時としてはかなり贅沢な6+8+6mmのLow-E複層ガラスを採用した。建築関係者には「そこまでするか」と笑われそうだが、一度使ってみたかった。
建材を物色中に製材所の倉庫の奥で発見したケヤキの板。70歳の製材所の主が働き始めたときには既に在ったはずとのこと。何年前に伐採され、何年間寝かせてあったか分からない。大人8人がかりでやっと動く代物である。この板は、そのままテーブルになった。
部屋の隅には、輻射と対流を組み合わせた暖炉を設置した。
2階のリビングの吹き抜けに向かう面は壁面とせずにロフト的なオープンな空間を設けた。リビングが開放感のある空間になった。
バーベキュー台やテーブルも自分でデザインした。テーブルは4台を自由に組み合わせられるようにし、家族だけの食事にも、大人数で集まる時にも対応できるよう工夫した。
年を重ね、周囲の自然も落ち着いてきた。山桜は夜にライトアップすると、昼とは違う表情を見せてくれた。
夏に真価を発揮するように計画した。その夏の外観。
もう私の山荘ではない。けれど、あの空間で過ごした時間は、今も変わらず私の記憶の中に残っている。